
創業ストーリー<第8話・最終話> 人・家・地域をつなぐ。その先へ。
人・家・地域をつなぐ。その先へ。
33年間勤めた京都市役所を辞めて、不動産会社を始める。
57歳での決断でした。
安定した仕事を辞めて、経験のない世界へ飛び込む。
振り返ってみても、大きな決断だったと思います。
もちろん、不安はありました。
不動産会社をつくったからといって、お客様が来てくださる保証はありません。
大手のような知名度もない。
会社としての信用の蓄積もない。
資金力もない。
それでも私は、新しい一歩を踏み出しました。
この「人・家・地域をつなぐ物語」を第1話から書きながら、
「自分は、なぜ不動産屋を始めたのだろう」
と、改めて考えていました。
市役所を辞めても、やりたいことは変わっていなかった
市役所では、33年間、さまざまな仕事を経験しました。
地域の方々と話をする。
困りごとを聞く。
制度を調べる。
現場へ行く。
関係する人や部署をつなぐ。
そして、一緒に解決方法を考える。
不動産会社を始めた今、毎日の仕事を振り返ってみると、不思議なくらい似ています。
売主様の話を聞く。
現地へ行く。
役所や法務局で調べる。
分からないことは専門家に確認する。
買主様へ物件のことを伝える。
そして、一つの家を次の人へつないでいく。
仕事は変わりました。
でも、
やっていることの根っこは、あまり変わっていないのかもしれません。
一軒の家には、一つの物語がある
不動産会社を始めてから、いろいろな家を見るようになりました。
新しい家もあれば、築年数を重ねた家もあります。
長い間、誰も住んでいない空き家もあります。
蔵のある家。
薪ストーブのある家。
井戸のある家。
たくさんの荷物が残ったままの家。
どの家にも、それぞれ事情があります。
そして、その向こうには必ず「人」がいます。
そこで育った人。
そこで家族と暮らした人。
その家を相続した人。
手放すことを決めた人。
そして、これからそこで暮らそうとする人。
だから私は、
不動産は、土地と建物だけを扱う仕事ではない
と思うようになりました。
家には、人の時間が詰まっています。
その時間を受け止めながら、次の人へ渡していく。
それも不動産会社の大切な仕事だと思っています。
第4話で、
「空き家に明かりが灯る、その瞬間のために。」
という話を書きました。
長く暗かった家に、新しい人が住む。
夜になると、窓から明かりが見える。
庭に洗濯物が干される。
近所の人と挨拶を交わす。
子どもの声が聞こえる。
たった一軒の家のことです。
でも、一軒の家に暮らしが戻ることは、地域にとって決して小さなことではありません。
一人の人が増える。
一つの家族が増える。
新しいつながりが生まれる。
それが積み重なれば、地域は少しずつ変わっていきます。
地域は、人がつくる
33年間の市役所勤務、PTAや地域活動、そして能登半島地震の被災地への派遣。
いろいろな経験を通して、私が感じてきたことがあります。
それは、
地域をつくるのは、最後は「人」だ
ということです。
建物だけでは地域にはなりません。
道路や公園だけでもありません。
そこに暮らす人がいて、
挨拶をして、
時には面倒な地域の行事を一緒にして、
困ったときには声を掛け合う。
そんな関係が少しずつ積み重なって、地域になります。
第5話で書いた神輿も同じです。
一人では担げません。
誰かが肩を入れ、誰かが支え、みんなで歩調を合わせるから前へ進みます。
地域も、会社も、きっと同じです。
「人・家・地域をつなぐ。」
会社をつくるとき、なかせ不動産が何をする会社なのかを考えました。
家を売る会社。
家を買う会社。
もちろん、それも間違いではありません。
でも、それだけでは、私がやりたい仕事を表せませんでした。
そして行き着いたのが、
「人・家・地域をつなぐ。」
という言葉です。
売りたい人と、買いたい人をつなぐ。
人と家をつなぐ。
新しく住む人と、地域をつなぐ。
空き家と、新しい使い方をつなぐ。
そして、今あるものを次の世代へつないでいく。
そんな不動産会社になりたいと思っています。
まだ、始まったばかりです
なかせ不動産は、まだ始まったばかりの会社です。
うまくいかないこともあります。
ホームページをつくり、SNSで発信し、一生懸命情報を届けても、問い合わせがないこともあります。
「本当に相談してもらえる会社になれるのだろうか」
と思うこともあります。
でも、信用には近道はないと思っています。
一軒の家を丁寧に調べる。
一人のお客様の話をしっかり聞く。
分からないことをごまかさない。
約束したことをする。
地域の中で顔を見せる。
その積み重ねしかありません。
だから、焦らず続けます。
「一回、なかせさんに聞いてみようか」
私が目指しているのは、地域で一番大きな不動産会社ではありません。
売上が一番の会社でもありません。
目指しているのは、
地域で、本当に相談してもらえる不動産会社です。
家を売ることが決まってからではなくてもいい。
「親の家、これからどうしたらいいんやろ」
「空き家になりそうなんやけど」
「相続したけど、何からしたらいいか分からへん」
「売るかどうかも、まだ決めてない」
そんなときに、
「一回、なかせさんに聞いてみようか」
と思い出していただける。
そして、話を聞いた結果、
「今は売らなくてもいいですよ」
という答えになることがあってもいい。
それでも相談してよかったと思っていただける。
そんな不動産会社になりたいと思っています。
57歳からの、新しい仕事
33年間勤めた市役所を辞めたことが正解だったのか。
その答えは、まだ分かりません。
会社は始まったばかりです。
これから失敗することもあるでしょう。
迷うこともあると思います。
でも、一つだけ確かなことがあります。
私は今、
自分がこれまで経験してきたことを、自分の責任で地域のために使える仕事
をしています。
33年間で身につけたこと。
地域のみなさんから教えてもらったこと。
人とのつながり。
そのすべてを持って、新しい仕事を始めました。
だから、57歳からでも遅くなかったと思えるように。
これからの仕事で証明していきたいと思います。
人と人をつなぐ。
人と家をつなぐ。
家と地域をつなぐ。
そして、今を未来へつなぐ。
人・家・地域をつなぐ。
株式会社なかせ不動産は、ここからです。
この物語も、これで終わりではありません。
これから出会う人、これから出会う家、そして地域の中で生まれる出来事が、
この物語の続きをつくっていくのだと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
