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親が認知症になる前に何をする?相続準備の事前対策を専門家が解説

幸せな「相続」について

中瀬 策羊

筆者 中瀬 策羊

不動産キャリア1年

不動産を「売る・買う」と決める前の段階から、お気軽にご相談ください。相続した家をどうするか、空き家を残すか売るか、住み替えをどう進めるかなど、まだ答えが決まっていないご相談も歓迎しています。京都市役所で33年間培った経験も活かし、お客様と一緒に選択肢を整理していきます。

親が認知症になるかもしれないと感じたとき、多くの方が最初に不安に思うのは介護のことかもしれませんが、実は相続準備も同じくらい重要です。
判断能力が低下してからだと、遺言を作れなかったり、財産の名義変更や売却といった手続きが思うように進まず、親の預貯金や不動産が事実上動かせなくなるケースもあります。
しかし、親が元気なうちから事前対策をしておけば、余計なトラブルや手間を大きく減らすことができます。
このページでは、親が認知症になると相続で何が困るのかという基本から、いつまでにどんな準備をしておくべきか、さらに具体的な事前対策の種類と特徴まで、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
親の相続をこれから迎える方が、落ち着いて次の一歩を踏み出すための参考としてぜひお役立てください。

親が認知症になると相続で何が困る?

親が認知症になると、日常生活だけでなく、相続の場面でも大きな影響が出やすくなります。
民法上、契約や遺言などの重要な法律行為には、内容を理解して判断する「意思能力」が必要とされています。
認知症により判断能力が低下し、この意思能力が欠けた状態で行われた契約や遺言は、無効と判断されるおそれがあります。
そのため、親の判断能力が不十分なまま署名押印をしても、後々トラブルとなる危険が高い点を理解しておくことが大切です。

また、親が認知症となった後に相続が発生すると、遺産分割協議そのものが進まなくなることがあります。
遺産分割協議は、法律上「相続人全員の合意」がなければ成立しません。
ところが、相続人の中に判断能力が不十分な人がいる場合、その人は有効に意思表示ができないため、協議に参加したとはみなされないとされています。
この結果、協議が無効と主張されるリスクが生じ、紛争や訴訟に発展するおそれがあることが大きな問題です。

さらに、親名義の預貯金や不動産が「事実上の凍結状態」となる点も深刻です。
金融機関は、本人の判断能力が低下していると判断した場合、原則として家族だけの申し出では預貯金を引き出せない運用としていることが多く、生活費や医療費に充てたい場面でも資金を動かせない事態が起こり得ます。
また、不動産についても、重度の認知症で意思能力がないと判断されると、売却や担保設定といった重要な取引はできません。
その結果、介護費用の捻出や住み替えのために親名義の財産を活用したくても、すぐには動かせず、家計全体の資金繰りが苦しくなることが少なくありません。

問題の場面 認知症による影響 家計へのリスク
契約や遺言の作成 意思能力欠如で無効リスク 想定どおり相続できない危険
遺産分割協議 相続人全員の合意が成立しない 相続手続き長期化や紛争化
預貯金や不動産の活用 口座凍結や売却不可の可能性 介護費用や生活費の不足

親が元気なうちに必ず知りたい相続準備の基本

相続準備を進めるうえでは、まず「誰がどれだけ受け継ぐのか」という基本的な枠組みを押さえておくことが大切です。
民法では、配偶者や子などの相続人の範囲と、その人たちが原則として受け継ぐ割合である法定相続分が定められています。
また、一部の相続人には、遺言や生前贈与があっても一定割合を確保できる遺留分が保障されています。
これらの用語を理解しておくと、親と話し合うときに誤解が生じにくくなり、相続対策の方向性も整理しやすくなります。

次に、親の財産の全体像を把握することが、実務的な第一歩になります。
具体的には、預貯金や有価証券、不動産、生命保険などの「プラスの財産」と、借入金や連帯保証などの「マイナスの財産」の両方を確認することが重要です。
通帳や保険証券、権利証、借入契約書などの保管場所を家族で共有しておくことで、相続開始後の調査負担を軽減できます。
併せて、相続税の基礎控除額や課税対象となる財産の考え方について、国税庁の情報で早めに目安をつかんでおくと安心です。

さらに、親の認知機能の変化も見据えながら、「いつまでに何を決めるか」という全体の流れを意識しておくことが欠かせません。
たとえば、判断能力が十分な段階で、財産の一覧作成や、だれにどの財産を託したいかという希望の整理、遺言書作成の必要性の検討などを進めておくとよいでしょう。
そのうえで、将来の介護費用や住まいの方針を含めて親子で話し合う時期を大まかに決めておくことで、認知症発症後に慌てて対応する事態を避けやすくなります。
こうした段階的な準備を意識しておくと、相続開始後の手続きも比較的スムーズに進めやすくなります。

準備段階 主な内容 家族で確認したい点
初期の情報整理 財産目録作成と負債把握 通帳や契約書の所在共有
方針検討の時期 相続の分け方の希望整理 相続人同士の意向のすり合わせ
具体化の時期 遺言作成や契約準備 認知機能低下前の手続完了

親が認知症になる前に検討したい主な事前対策とそれぞれの特徴

親が元気なうちにできる相続対策としては、公正証書遺言の作成や生前贈与の活用が代表的です。
公正証書遺言は、公証人役場で公証人が関与して作成する遺言であり、方式の不備による無効リスクが低く、原本も公証人役場で保管されます。
一方、生前贈与は、親の判断能力がしっかりしている間に、特定の財産をあらかじめ移転しておく方法です。
いずれも、親の意思を明確にしておくことで、将来の相続争いを防ぎやすくなる点が大きな特徴です。

将来の財産管理を託す仕組みとしては、任意後見契約と家族信託が注目されています。
任意後見契約は、本人に判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、財産管理や身上保護を任せる人をあらかじめ契約で決めておく制度です。
これに対して家族信託は、信託契約などにより、親が保有する不動産や預貯金などを家族に託し、その家族が受託者として財産管理を行う仕組みです。
どちらも、親が認知症になった場合でも、一定の範囲で柔軟な財産管理を続けやすくする点が共通の目的となります。

成年後見制度は、すでに判断能力が不十分になった人を保護するための制度であり、家庭裁判所が後見人等を選任する点が、事前に備える任意後見契約や家族信託との大きな違いです。
成年後見制度では、本人の財産が厳格に管理される一方で、利用目的以外の柔軟な財産活用が制限される場合があることや、専門職後見人を選任した場合の報酬負担なども考慮する必要があります。
そのため、親が元気な段階で、公正証書遺言や任意後見契約、家族信託など複数の選択肢を比較し、どこまでを事前対策で備え、どこからを成年後見制度で対応するかを検討しておくことが大切です。

制度・方法 主な目的 利用開始のタイミング
公正証書遺言 遺産分割の方針明確化 判断能力が十分な生前
任意後見契約 将来の財産管理・身上監護 元気なうちの契約締結
家族信託 家族による柔軟な財産管理 認知症発症前の早期設定
成年後見制度 判断能力低下後の法的保護 認知症進行後の家庭裁判所申立て

親の認知症や相続準備で不安を感じたときの相談先と進め方

親の物忘れが増えたと感じたときは、まず地域包括支援センターに相談すると全体像を整理しやすくなります。
地域包括支援センターには保健師や社会福祉士などが配置され、高齢者の総合相談窓口として機能しているとされています。
相談内容に応じて、医療機関の受診や認知症の専門医、介護保険サービスなどへつなぐ役割も担っています。
そのため、どこに連絡すべきか分からない段階でも、最初の窓口として活用しやすい存在です。

認知症の疑いがある場合は、かかりつけ医や専門外来での受診と並行して、介護保険の申請手続きも早めに検討すると安心です。
介護保険では、市区町村の窓口や地域包括支援センターで要介護認定の申請を行い、その後、認定調査や主治医意見書の作成を経て、介護認定審査会で要介護度が決定されます。
認定結果が出るまでには通常おおむね1か月程度を要するため、相続準備を意識したときに併せて申請時期を検討しておくことが重要です。
早期に介護保険サービスを利用できれば、親の生活を支えつつ、家族が相続や財産管理を落ち着いて考える余裕も生まれます。

一方で、相続税や贈与税については、公的な情報源を活用して基礎的な仕組みや大まかな税額感を把握しておくことが役立ちます。
国税庁の「相続税のあらまし」や「相続税の計算」のページでは、基礎控除額や税率構造、具体的な計算手順のほか、入力項目に応じて相続税の申告要否を判定できる案内が掲載されています。
また、贈与税についても国税庁の解説ページで税率表や特例制度の概要を確認できるため、親の生前贈与を検討する際の判断材料になります。
さらに、税務署や国税局電話相談センターの相談窓口を活用すれば、具体的な疑問点について公的な見解を確認することができます。

相談内容 主な相談先 得られる支援
認知機能の不安や介護全般 地域包括支援センター 医療・介護窓口の紹介
要介護認定や介護保険利用 市区町村窓口等 申請手続きの案内
相続税・贈与税の基礎確認 国税庁情報・税務署 税制の概要と相談

親の相続や不動産を含む財産管理については、こうした公的情報や相談窓口で全体像を把握したうえで、個別事情に応じた専門的な助言を受けることが大切です。
特に、不動産の評価や分け方、将来の売却や活用を見据えた相続方法は、家族構成や資産内容によって最適な選択肢が大きく異なります。
認知症が進行してからでは契約行為が制限され、遺言書作成や生前の対策が難しくなるおそれがあるため、判断能力が十分なうちから早めに相談し、家族で方向性を共有しておくことが重要です。
そのうえで、相続全体の方針と不動産の扱い方を整理しておくと、親が認知症になった場合でも、家族が迷わず手続きに進みやすくなります。

まとめ

親が認知症になると相続や財産管理の手続きが一気に難しくなり、預貯金や不動産が実質的に動かせない状況になりやすくなります。
そのリスクを減らすには、親が元気なうちに財産の全体像を共有し、公正証書遺言や生前贈与、任意後見契約や家族信託などを早めに検討することが重要です。
当社では、こうした事前対策の流れや不動産を含む財産の整理方法について、初めての方にもわかりやすくご説明します。
「何から始めればよいかわからない」という段階でも構いませんので、相続や親の認知症に不安を感じたら、ぜひ一度ご相談ください。

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