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相続登記未了の不動産は売却できる? リスクと方法を知り安心して手放すコツ

不動産の「売却」について

中瀬 策羊

筆者 中瀬 策羊

不動産キャリア1年

右京区で育ち、暮らしてきた経験を大切にしながら、安心してご相談いただける身近な存在でありたいと思っております。京都市職員としての経験を活かし、あらゆるお悩みに丁寧に寄り添います。
当地で三代続く家業(理容院)を通じて、これまで地域の方々にお支えていただいていることも、私の原点です。どんな小さなことでも気軽にお声がけください。

 「親から引き継いだ家を売りたいけれど、相続登記をしていない」「相続人が多くて、どう動けばいいのか分からない」。このようなお悩みは、実は珍しくありません。ただ、相続登記が未了の不動産は、そのままでは原則として売却できず、放置すると思わぬトラブルやペナルティにつながる可能性もあります。

 そこで本記事では、相続登記未了の不動産を売却したい方に向けて、「売却できるのか」という基本から、具体的な手順、登記をしないまま放置するリスク、さらにスムーズに進めるための相談先や準備まで、順番に分かりやすく解説します。いままさに売却を検討している方も、まずは全体の流れと注意点を一緒に整理していきましょう。

相続登記未了不動産は売却できる?基本

 相続登記が未了の不動産は、登記簿上の所有者が亡くなった方のままになっているため、そのままでは売買契約を締結しても所有権移転登記ができず、実務上は原則として売却できません。買主側や金融機関は、登記簿上の名義と実際の売主が一致していることを強く求めるためです。

 したがって、まずは相続人名義への相続登記を行い、売主と登記名義人を一致させることが、不動産売却の出発点となります。

 近年導入された「相続人申告登記」は、相続登記に比べて簡便に相続人の存在を登記簿に反映させるための制度ですが、これはあくまで相続人が誰であるかを申告する手続にとどまります。そのため、売却による所有権移転登記を行うためには、従来どおり相続による所有権移転の相続登記が必要とされます。相続人申告登記のみでは、登記簿上の所有者が被相続人のままであることから、売買に伴う所有権の移転先を明確にできない点に注意が必要です。

 また、令和6年4月1日からは、不動産を相続した相続人に対し、相続登記の申請が義務付けられました。相続人は、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内、または遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。正当な理由なく期限までに申請を怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性があるとされており、売却を検討している方ほど、早期の相続登記が重要になります。

項目 相続登記 相続人申告登記
登記の目的 名義を相続人へ変更 相続人の存在を申告
売却への利用可否 売却に必要な登記 売却には原則不可
申請義務と過料 3年以内義務・過料対象 義務化対象外の扱い

相続登記をしていない不動産売却の手順

 相続登記をしていない不動産を売却するためには、まず誰が相続人かを法律上はっきりさせることが重要です。そのために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍や除籍、改製原戸籍をそろえ、相続人全員の戸籍も集めていきます。また、公正証書遺言や自筆証書遺言がないかどうかを確認し、遺言がある場合は内容に従って手続きを進める必要があります。これらの準備が正確に行われているほど、その後の相続登記や売却の手続きがスムーズに進みやすくなります。

 次の段階では、相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産を誰がどのような割合で取得するかを話し合います。そして、合意した内容をもとに、日付や不動産の所在地、各相続人の持分を明記した遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名押印します。そのうえで、登記申請書、被相続人と相続人の戸籍、住民票、固定資産評価証明書、遺産分割協議書などをそろえ、法務局に相続登記を申請します。相続登記が完了して初めて、相続人名義で不動産を売却できる状態になります。

 相続登記が完了した後は、名義人として不動産の売却活動を進めていきます。一般的には、売却の方針や希望条件を整理し、査定や価格の検討を行ったうえで、売り出し、購入希望者との交渉、売買契約、引き渡しという流れで進みます。また、売却益に対する譲渡所得税や、相続した不動産を売る場合の特例の有無など、税金面の確認も大切です。名義が適切に整っていれば、売買契約書の作成から代金決済、所有権移転登記まで一連の手続きをスムーズに行いやすくなります。

段階 主な内容 確認すべき点
事前準備 相続人確定・戸籍収集 相続人漏れの有無
相続登記 遺産分割協議書作成 持分・記載内容の正確性
売却活動 価格検討・契約締結 税金・引き渡し条件

登記未了のまま放置するリスクと注意点

 相続登記をしないまま不動産を売却しようとすると、登記上の所有者と実際の所有者が一致していないため、売買契約が無効と判断されるおそれがあります。また、買主側の金融機関による融資審査が通らず、取引自体が中止となるケースもあります。さらに、売却後に他の相続人から所有権を主張され、二重譲渡のような紛争に発展する可能性もあるため、相続登記を完了させたうえで売却手続を進めることが重要です。

 相続登記を長期間放置すると、相続が重なることで相続人の数が増え、誰がどの持分を有しているのか分かりにくくなります。その結果、一部の相続人の所在が不明で連絡が取れない、あるいは意見がまとまらず遺産分割協議が成立しないなど、売却に必要な合意形成が極めて困難になります。法務省の資料でも、所有者不明土地の原因の約3分の2が相続登記未了とされており、このような状態になる前に早期の登記申請を行うことが望ましいとされています。

 加えて、相続登記をしないまま放置すると、固定資産税や管理の負担は事実上の相続人が負うにもかかわらず、登記名義人が故人のままという不安定な状態が続きます。令和6年4月1日からは、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内の相続登記が義務化され、正当な理由なく申請しない場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。また、令和6年4月1日より前の相続で未登記のものについても、令和9年3月31日までに申請する必要があるとされており、放置するほど金銭的・時間的な負担が増大しやすい点に注意が必要です。

放置による主なリスク 具体的な内容 売却への影響
売買契約の無効リスク 登記名義人と実所有者の不一致 融資不可・取引中止
相続人関係の複雑化 相続人増加・所在不明者の発生 遺産分割協議の長期化
法律上のペナルティ 相続登記義務違反の過料 追加費用・手続負担増

売却をスムーズに進めるための相談先と準備

 相続登記が未了の不動産を売却する際には、どこに何を相談するのかを整理しておくことが大切です。まず、相続登記の具体的な手続や法務局への申請書作成については、司法書士や弁護士が専門家として相談に応じる職種とされています。登記申請そのものの方法や必要書類については、法務局でも一般的な案内を受けることができますが、代理や書類の作成は専門家に限られている点に注意が必要です。また、建物の表示登記や未登記建物がある場合には、土地家屋調査士に相談することが適切とされており、手続の内容に応じて相談先を分けることが重要です。

 相談のタイミングとしては、相続人の確認や遺産分割の方向性がある程度まとまった段階で司法書士等に依頼することで、登記申請までの流れを具体的に組み立てやすくなります。また、相続登記の申請義務は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内とされており、売却を考えている場合はこの期限を意識して早めに相談することが望ましいとされています。さらに、法務局や司法書士会等では、相続登記や相続人申告登記に関する無料相談窓口や電話相談が案内されており、初めての方でも相談を始めやすい環境が整えられています。このような公的な情報も参考にしながら、無理のないスケジュールで進めることが大切です。

 相談を円滑に進めるためには、事前に用意できる書類や情報を整理しておくことが有効です。一般的には、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、被相続人の住民票の除票、不動産の登記事項証明書や固定資産税の課税明細書などが、相続登記や相続内容の確認に用いられます。さらに、遺言書の有無や、相続人間でどのように不動産を取得し、最終的に売却するかといった希望を整理しておくと、専門家との打合せがスムーズに進みます。これらの書類は相続登記だけでなく、金融機関の相続手続や税務手続にも利用されるため、早めに収集しておくことが、全体の負担軽減にもつながります。

準備しておきたい主な書類 主な入手先 主な利用場面
被相続人の戸籍・除籍謄本類 本籍地の市区町村役場 相続人の確定・相続関係説明
相続人全員の戸籍謄本 各相続人の本籍地役場 登記申請添付・相続人確認
登記事項証明書と課税明細書 法務局・市区町村役場 不動産特定・評価額把握

 相続登記が未了の不動産を売却するか迷っている場合は、早い段階で身近な不動産会社へ相談することも有効です。不動産会社は、地域の市場動向や売却時期の目安、相続登記完了後の売却手続の一般的な流れなどについて説明する窓口となり得ます。また、売却を前提とした場合の必要な手順や、おおよその売却価格の目安を把握しておくことで、相続人間の話し合いを進めやすくなるという利点もあります。そして、不動産会社への相談で得られた情報を踏まえつつ、相続登記については司法書士等の専門家と連携して進めることで、登記と売却の双方を無理なく進行させることができます。このように、相談先と準備を整理しておくことが、売却までの一連の流れを円滑にする重要なポイントです。

まとめ

 相続登記が未了の不動産は、そのままでは原則として売却できません。まず相続人の確定や遺言書の有無確認、戸籍収集を行い、遺産分割協議書を作成したうえで相続登記を済ませることが重要です。相続登記には期限や過料のルールがあり、放置すると固定資産税や管理負担、相続人間のトラブルなど多くのリスクが高まります。具体的な進め方に迷う方は、早い段階で身近な不動産会社へ相談し、売却までの流れを一緒に整理していきましょう。

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